キャラクター小説を読もうとあさっていたところ見つけた作品です。
人によっては「お涙頂戴のありきたりな設定」と思うかもしれませんが、
個人的には良作でした! 切なくて、それでいて温かい話!
二見サラ文庫とは?
あまり聞かないレーベルだなぁ、と思い調べてみたところ、まだ創刊されて間もないレーベルなのですね(創刊は2018年7月10日)
「サラ」とはサラブレッドの頭二文字だそうで、二見書房さんには昔、サラ・ブックスという新書があったそうです。そちらはノンフィクションを中心としたものだったようですが、その頃の理念である「現代を生き抜くための思考を栄養源として、時代に即応した新しい企画を読者の皆さんとともに育てていく」を受け継いだ、現代の読者の求めるエンターテイメント作品を届けるためのレーベルが、「二見サラ文庫」とのことです。
ようは、現代で人気を誇るキャラクター小説用のレーベル、ということでしょうか。
詳しくは以下のURLを参照してください。

あらすじ
生まれ育った小さな島での想い出に七年もの間縛られていた主人公。
最も想い出の色濃い古びた灯台が取り壊されるということを知り、どうしてもそれを見届けなければならない、という思いに駆られ、島へと戻る。
幼い恋の亡骸を回収するために――。
詳しくは以下をご覧ください。

ありきたりかもしれないが、悲しく切ない、それでいて読後感の良い作品!
基本的な話はボーイミーツガールから始まり、互いに恋をした男女が、結局結ばれることがなかった、という、ある種テンプレの話です。
ですが、このテンプレは大まかな筋道というだけであって、どんな内容を盛り込むかによって、その作品の色はがらりと変わると思います。
今作において一番良かった、と思ったのは主人公とヒロインが離れ離れになり、その恋が終わる経緯です。
以下はネタバレを含むので、気になる方はご遠慮ください!
誰が悪いわけでもないということ
昴(主人公)と月菜(ヒロイン)は、夜中に度々旧灯台で出会っていたことを咎められ、引き離されます。ちょうど、昴は海を渡った先にある予備校に通うことが決まっていたので、両親に無理やりそこに下宿をさせられることになり、夏休み期間であるほぼ一か月の間、島に戻ることができなくなりました。
その間に、月菜は抱えていた病気によって亡くなってしまいます。
昴は月菜の病気のことを知らなかったので、愕然。そして、両親に罵詈雑言を浴びせます。
どうして、月菜の死を知らせてくれなかったのか。こんなことならわがままを言ってでも島を出るべきではなかった、と。
この境遇はぐっときました。
何が良かったって、誰が悪いというわけでもない。
昴の両親は、月菜に変な噂が立つことを良くないと考え、ほとぼりが冷めるまで二人を引き離します。これは、親として、そして小さな島で暮らす若い女の子のことを考えるうえで、当然のことだと思います。
昴自身もそのことがわかっているので、大人ぶって島から出ることを決意。両親に今やるべきことをやれ、と言われ、熱心に勉強に取り組みます。これも正しい選択の一つ。
月菜は、昴が戻ってくるまで生きていられないとわかっていますが、昴を引き留めることは、昴の将来を奪うことと同等。病気のことも打ち明けることができない。これも、彼女からしたら苦渋ではありますが、正しい選択。
誰も、理不尽に二人を引き裂こう、という意思はなかったのです。
でも、結果として二人はもう、出会うことができなくなった。
この流れは、ぐっとくるものがありました。明確な悪がいるわけでもないから、すべては八つ当たりにしかならない。そんなことをしても月菜は戻ってこないけれど、感情の奔流は止められず、昴の心に空いた穴は埋まることはない。
月並みな、少年少女の出会いと別れの物語ですが、その引き裂き方、それぞれの思惑と境遇が絶妙な匙加減で、物語にのめりこむことができました。
まとめ
上手くいけば、映画化くらいはできるのではないでしょうか。
是非、この物語を映像で見てみたい、と思う方がいらっしゃいましたら、売上に貢献しましょう笑
作者さんの次回作も期待です!