MF文庫Jの新刊(令和元年12月25日刊行)の作品である『ゲーマーズ・ハイ 影の王者の後継者』。
公式HPの謳い文句である「新世代ギャンブル系頭脳バトル」という単語にそそられ、楽しみにしていた作品だったのですが……とんだ肩透かしを食らいました。
簡単なあらすじ
伝説の賭博師の孫である主人公サキトのもとに謎の美少女エレーナやってきて、裏カジノへと足を踏み入れる……というのが導入です。
詳しくは以下の公式HPをご覧ください。
読み終わってからあらすじを確認すると、確かに嘘偽りが書かれている、というわけではないのですが……何と言いますか、誇大広告では? という感想は否めません。

果たしてこの作品のジャンルは頭脳バトルなのか。
前述しましたが、公式HPでは、この作品のジャンルは「新世代ギャンブル系頭脳バトル」だと紹介されています。
頭脳バトル系の作品は個人的に大好物で、だからこそ、その謳い文句に惹かれ、この作品を購入しました。
読む前までは、『アクマゲーム』のような、数多くの天才少年・少女たちがその頭脳を持って戦いを繰り広げるような内容を期待していました。
ですが、この作品は全くそんなことありません。
「新世代ギャンブル系頭脳バトル」 なんていうものはまやかしです。
恋愛小説、もしくは青春小説にジャンル分けしたほうがいいのでは? というほど、ギャンブル要素もなく、頭脳バトル要素もありませんでした。
頭脳バトルというのにバトル描写がほとんどない。
第1巻において、主人公がちゃんとしたバトルをするのは三回。
そのうちの1回目は、主人公がヒロインとともに裏カジノに出向き、優勝する場面なのですが……。
ここの描写は一切ありません。
ほかのバトル場面に関しても全体の分量に対しては非常に短く、内容も薄っぺらい。
これが一番のがっかり要素だったと思います。
頭脳バトルを楽しみに本を開いたのに、一体僕は何を見せられているんだ……と少し途方に暮れました。
魅力的な敵キャラは皆無。主人公がただただ強いだけ。
主人公は伝説の賭博師の孫であり、昔から祖父にギャンブルのやり方を教わっているため、一般人とはかけ離れた技術を持っています。
この設定は別にいいんです。むしろ歓迎です。基本的に頭脳バトル系というのは、主人公はハイスペックに設定されるものですしね。そうじゃないと相手を圧倒したときのカタルシスもない。
この作品の問題は、魅力的な敵キャラが一人も存在しないということです。
一般人に毛が生えたような奴らをただただ蹂躙するだけ。
もっとこう……天才の主人公が、別の天才としのぎを削り合う、という展開を期待していたので、本当にがっかりでした。
どこで盛り上がりがあったんでしょうか……。
主人公はギャンブラーを気取ってるだけのただの高校生。
伝説の賭博師の祖父より技術を授かっている主人公。
この小説の世界には、カジノが公的に存在しているのですが、そこに入れるのは20歳から。
まだ18歳である主人公はカジノを訪れていません。
また、ギャンブルは基本的に祖父とやっていたものと、アプリゲームのものくらい。
……これのどこがギャンブラーなんでしょうかね?
『ワンナウツ』の渡久地さんを見習ってほしいものです。
主人公は、「ギャンブルは約束事でできているから、ギャンブラーは絶対に約束を破らない」という信条を祖父から教わり、それを頑なに守るため、登場人物たちとの約束を守るために主人公が奮闘する、というのが物語の流れなのですが……主人公はただの遊戯としてのギャンブルが得意なだけの青年です。
ギャンブラーを気取ってどや顔を決めるなら、幼いころから命をかけたギャンブルを生き抜いてきたというような、凄絶な背景が欲しかったなぁ、と思いました。
そうでないなら、ギャンブルの才能はあるが、まだ本物のギャンブルを知らない主人公が、常に命の取り合いをするような、狂ったギャンブル中毒者たちを前に、慄きながらも己の技術と頭脳で切り抜けていく、というような設定のほうが良かったのでは? というのが個人的な感想。
あくまで僕個人の好みの話ですけどね……。
まとめ
このラノベのジャンルは恋愛ものだと思います。
「ギャンブル系頭脳バトル」というにはその要素がいささか弱すぎます。
ただ、読み物としてのクオリティは高かったと思います。
ヒロインの一人とのやりとりは、恋愛ものとしては良くできていました。
なので、悪くはないのだが肩透かしな作品というのが、全体の感想です。
まあ、これはまだ一巻の話。
二巻以降で、一気に公式の謳い文句どおり、「ギャンブル系頭脳バトル」になるのかもしれません。
二巻での濃密なギャンブルストーリー、魅力的なキャラクターの登場に期待したいです!