『猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』シリーズでおなじみの内藤 了さんの新シリーズのようですね。
『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』というタイトルでドラマが少し前にやっていたのを覚えております。

内藤さんの作品を読んだのは初めてでしたが、標題にも書いたとおり、構成・内容・登場人物のすべてが魅力的な作品でした!
簡単なあらすじ
単位が足りなくなって卒業できなくなりそうになった城崎あかねは、研究室の手伝いをすると単位を貰えるという裏技を知り、『夢科学研究所』という精神医学の研究室を訪れ、風路亥斗(通称フロイト)と森本太志(通称ヲタ森)と出会う。
「何かに追われて森の中を逃げ、どこかに逃げ込むと襲われる」という悪夢を複数人が見ており、その中の何人かが死んでいるということを知り、三人はその謎の解明を行うが――。
詳しくは以下で。
感想! どこを取っても文句のない良作!
この作品はジャンルで分けると「キャラクター小説」であり「ミステリー」であると思いますが、構成・内容・登場人物のどれもが卓越していて、非常に素晴らしい作品でした!
構成が巧妙!
まず、これはミステリーの王道ですが、一番最初に死体が一つ転がります。
悪夢を見た青年が、錯乱状態のまま窓から落下して死亡します。
その後、主人公であるあかねの視点へと移動。
単位取得のために「夢科学研究所」を訪れたあかねでしたが、最初の事故(あるいは事件)と同様の悪夢を見る女性と出会い、フロイトたちの研究内容及び、悪夢の真相について興味を抱き始めます。
ネタバレになるとアレなので詳しくは書きませんが、自堕落で無気力なあかねが、一巻の内容を通して人間的に成長していく様、悪夢の真相に迫っていく緊迫感、フィールドワークでの、自然の安らぎと恐怖の入り混じったような描写など、小説としての体裁が綺麗に整った作品だな、と思いました。
キャラクター小説なので会話文が多かったような気もしますが、その会話の内容も小気味良くて、地の文に頼ることなく、会話の中で個々のキャラクターの性格などがわかってくるので、非常に読みやすく、また楽しい小説でした!
内容は深いし面白い! 夢というものに興味を抱かざるを得ない!
本作の主軸は「夢」にあります。人間が寝ている間に見る「夢」です。
第1巻の内容は悪夢についての究明でしたが、作中の中で「夢の可視化」という技術が出てきます。
VR等を利用し、夢の内容を実際にそれを見た人から話を聞いて再現し、ほかの人にもその夢の中を体験させることができる、というものでした。
これは非常に面白いなぁ、と。
簡単にネットで調べてみたところ、この技術は現代ではまだ完全に実用化(もしくは一般化)されてないようですが、近々そういう時代がくるのであれば、それはとても楽しみです。
僕自身、夢をよく見るほうだからかもしれません。
夢にはいろいろな意味がある、と言いますが、そういうことを調べてみようかな、と夢に興味を抱かせる作品でした。
良く夢を見る人になんかはオススメの小説かもしれません!
登場人物のキャラが立っていて面白い!
ロイド眼鏡をかけている、学者然としたフロイト。
夢の可視化の技術に非常に秀でているが、その他は杜撰なオタクであるヲタ森。
そして物語の目の役割を持っている主人公、少し頭の足りない、気分で頭をピンクに染めたりする楽観少女あかね。
人物描写をくどくどと書き記すことでキャラクターの個性を読者に伝えるのではなく、会話の端々からキャラクターの魅力を醸し出すという技法がとても秀逸でした!
会話文が多いので小説をあまり見ない人でも読みやすいでしょうし、キャラクター小説の楽しさの入門作としてはとてもおすすめです!
まとめ
総合的に判断して、完全なる良作です!
ミステリーをよく読む方にも、キャラクター小説にはまっている方にも、これから小説を読んでみようかな、という方にも、夢について興味があるという方にも、どんな人にもおすすめのできる作品でした!
すでに三巻まで刊行されているようなので、そっちも是非読んでみたいと思います!